中国の推理バラエティ番組『大偵探(旧:明星大偵探)』はいいぞ!~基本編~
中国で暮らしている方なら、ここ数年「マーダーミステリー(剧本杀)」なるものがめちゃくちゃ流行っている、という話を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
中国でのオフラインのマーダーミステリー(体験型推理ゲーム)市場は2010年代終盤から2020年代にかけて一気に拡大しました。《2021实体剧本杀消费洞察报告》によると、2019年に12,000店ほどだった店舗数は2021年4月には45,000店に達し、市場規模は2022年に240億元(約4,900億円)近くになると言われています。[1] 北京や武漢など一部の大都市では店舗数が1年で1.5倍になった場所もあり [2]、今や繁華街に出かければどこでも見かける、映画やカラオケと並ぶほどのメジャーな娯楽になっています。
この空前のブームのきっかけとなったのが、湖南衛星テレビ傘下のMango TVで2016年から放送されている推理バラエティ番組『大偵探(旧:明星大偵探)』です。私は元々ミステリはまったく素人だし、マダミスのブームも「そういうものがあるんだな」くらいの空気感で見てたのですが、『大偵探』を見ているフォロワーさんがめちゃくちゃ楽しそうなので同時視聴会に混ぜてもらった結果、見事にドはまりしました。
マジでズブズブにハマったので周りの人にも勧めまくりたいところなんですが、布教の難易度が高すぎるという問題に直面しています。「最近マダミス番組にハマっててぇ」と言っても第一声は大概「マダミス?何それ?」で返ってくるので、すかさず「一流の俳優がガチで推理ゲームするんだけど…。」とかなり温度高めで説明しますが、99.9%「へぇ~、そうなんだ。」で会話が終わります。
いや、ピンとこないですよね。今までにないタイプの番組だからこそ面白いんですけど、その分説明にめちゃくちゃ時間と労力を要する。さらに、たとえ興味を持って見てもらったとしても1エピソードがめちゃくちゃ長い(3~4時間)上に、シリーズ通して見ていないと分からないネタが各所に散りばめられていて、初見だと魅力の40%くらいしか伝わらないのも難しい。極めつけは、ネイティブの視聴者でも難しい複雑な謎解きを外国語でしなければならないという究極のハンデ。(2022年7月現在、中国語・英語字幕版しかありません)
そんな感じでいろいろ布教に障害が多すぎる状況ではあるものの、一段ずつステップを敷いていくしかないよね…。というわけで、手始めにそもそも『大偵探(旧:明星大偵探)』て何ぞや、というところから基本的なルール、そしてFalの完全な主観によるお勧めポイントをまとめるべく努力してみようと思います。
番組概要
中国湖南衛星テレビ傘下のMango TVが、韓国の推理バラエティ番組『クライムシーン』の権利を購入し制作。2016年に中国初の推理バラエティ番組として放送開始して以来徐々に人気が高まり、その後の推理サスペンスドラマブームやオフラインのマーダーミステリーブームの先駆けになりました。[3]
番組では豪華な犯罪現場のセットを舞台に人気芸能人が推理を繰り広げるだけでなく、時の社会問題と絡めたストーリー性の高さや、豊かなキャラ設定も魅力。2022年7月現在第七季まで放送済で、2022年第4Qから第八季が放送開始予定です。
本編は公式YouTubeチャンネルで無料で見ることができ、英語字幕がついているものもあります。
基本ルール
- 通常6名の出演者が探偵とプレイヤーに分かれ、与えられた人物設定を演じながら殺人事件の犯人を推理する
- プレイヤーの中に1人(または2人以上)犯人が隠れている
- 嘘をついていいのは犯人のみ
- 最後に探偵とプレイヤー全員で投票を行い、犯人の得票数が最多であれば検挙成功
- 検挙に成功した場合、犯人に投票したプレイヤーのみバッジを1つずつもらえる
- 探偵は2回の投票のうち1回のみ正解の場合1つ、どちらも正解の場合は2つバッジをもらえる
- 犯人が勝利した場合、犯人役のプレイヤーが参加者数分全てのバッジをもらえる
- 本編内で獲得したバッジの数と、番外編で行われる毎エピソードのMVP投票で獲得したバッジの合計数で、シーズンの順位が決まる
※報酬のバッジは、第六季以前はゴールドバーでした
番組の流れ
第七季時点での番組本編の流れです。
導入(殺人事件被害者発見)
セット(またはロケ地)に探偵・プレイヤーが順に登場し、殺人事件の被害者が発見されます。
自己紹介・アリバイ証明
プレイヤーが1人ずつ簡単な自己紹介をし、その日の行動を時間順に共有します。
第一回捜索
事件現場及びプレイヤーのプライベートスペースを、2チームに分かれて捜索します。
第一回集中推理
第一回捜索で発見した手がかりを1人ずつ発表し、推理を行います。
探偵一回目投票
第一回集中推理の内容を元に、探偵が一回目の投票を行います。
第二回捜索
第一次集中推理で討論された捜査の方向性も踏まえ、二度目の捜索を行います。
第二回集中推理
これまでに出た全ての手がかりを再度整理し、最後の集中推理を行います。
最終全員投票
探偵とプレイヤー全員が非公開で投票を行います。
結果発表
投票の結果、検挙に成功したかどうかの発表です。最多得票を獲得したプレイヤーは、犯人であるか如何に関わらず檻に入らなければなりません。
お勧めポイント
社会問題も絡めた高いストーリー性
「芸能人が推理ゲーム」というとワチャワチャ遊んでいるようなイメージかもしれませんが、一つのエピソードが壮大な物語になっていています。それを一流の人気俳優がガチで演じてくるわけで、普通に泣かされます。
また実際の社会問題を反映したエピソードも多く、これまで家庭内暴力や小児性犯罪、いじめ、環境問題、テクノロジーの弊害などがテーマになりました。もちろん全てのエピソードがそうではなく、時代ものや映画のパロディ、比較的ライトなものから見終わった後葬式みたいな顔になるズッシリ重いものまで、バラエティに富んだシナリオが用意されていて飽きません。
豪華出演者の魅力爆発!推しの色々な一面が見られる
劉昊然、白敬亭、張若昀など売れっ子俳優が出演していますが、ガチの演技とリラックスした素の姿、さらに脳をフル回転している真剣な表情のギャップが一度に見られるのが、本当に最高すぎてダメです。
今まで知らなかった出演者でも、本当にみんな頭脳明晰で可愛いorイケメンで個性豊かで面白いので、レギュラーメンバーは誇張でなく漏れなく全員好きになってしまっています。好きな人が多すぎて困る。ここでは到底語りきれないので、レギュラーメンバー紹介は別記事でやろうと思います!
関係性が尊い
『大偵探』を“芸能人がクソほど金のかかったマダミスをプレイする番組”くらいに考えていると取り返しのつかないことになります。関係性の玉手箱です。— 、ζ、ぁʓ (@fal48) May 5, 2022
本件については以上です()
レギュラー達の息のあった掛け合いと豊富な小ネタ
何老師(何炅)・撒老師(撒貝寧)の人気司会者コンビを筆頭にした個性豊かなレギュラー達の掛け合いは本当に家族のようで、一生一緒にいてくれと願わずにいられません。死ぬまでずっと見るから第百季までやってほしい。
七季までのエピソードの中で生まれた人気キャラやカップリング、名シーンや伝説のギャグなどが後のエピソードでも度々登場してくるのもファンにはたまりません。最初のうちはネタが分からなくて若干疎外感があるのですが、見れば見るほどネタが分かるようになって面白くなっていくという罠が仕掛けられており、この段階になるともう沼から抜けるのは無理です。
まとめ
というわけで、まだまだ語りたいことの2%くらいの感覚ですが、ひとまず『大偵探(旧:明星大偵探)』の基本情報をつらつらと書きました。レギュラー出演者の紹介やおすすめエピソードも気が向いたら紹介したいんですが、気が向くといいな…。たまにTwitterで日本語字幕をつけた動画を共有しているので、こちらもご参考ください。番組の雰囲気が何となく掴めると思います。
中国コンテンツの中でもバラエティ番組はなかなか日本に入ってこないのがもどかしいですが、日本でも知名度のある俳優やアイドルもけっこう出演しているので、興味のあった方が少しでも楽しんで見て頂けるきっかけになればいいなと思います。
ちなみにこれだけ偉そうに書きましたが、現時点で一季~七季までの全エピソードの半分も見られていません。とりあえず第八季が始まるまでにコンプリートすることを目標に頑張る!
脚注
[1]全国剧本杀门店数量达4.5万家、消费群体学生占比近三成,剧本杀为何让他们着迷?
[2]剧本杀行业现状及趋势分析 门店数量快速增多 多元素融合下市场有望进一步扩张
[3]节目背景 《明星大侦探》 -百度百科